ジュニアです。
元AVメーカー「ソフトオンデマンド」の社長高橋がなりさんが始めた国立ファームが運営するお店、「農家の台所」に行ってきました。
国立ファームは、JAに頼らない農業生産物の生産と流通に取り組んでいて、色々と面白い試みをしています。
http://www.kf831.com/
その反体制的な行動理念、農業の既存の仕組みを変えていこうという考え方も相当面白いのですが、まずはお店という具体的な形になっているところに行って、実際に目指している形の1つを見てきました。
お店は国立にあってアクセスしやすいとは決して言えませんが、その分空間をゆったり使っていて、昔の民家をイメージしたような内装の店内に物販エリアもかなり広く設置してあります。
↓何よりもインパクトが強いのが、お通しとして頼む「井戸サラダ」。
グラスを一人一つ受け取って、その中に好きなだけ野菜をつめることが出来ます。
珍しい野菜が井戸を模した台の上に氷で冷やしてあって、店員さんから説明を受けながらグラスに乗せていきます。
UFOの形をしたかぼちゃや、普通のサイズより何倍も大きいオクラなど、色や形や品種が通常とは違う野菜が多く、説明を受けているだけでもすごく楽しいです。
↓野菜サラダの次は、名物料理のタジンをオーダーしてみました。
タジンというのは元はモロッコの蒸し焼きに近い料理方法ですが、煮た時ほど水っぽくもなく、焼いた時ほど野菜が乾燥しないので、野菜の瑞々しさをちょうど良い具合に楽しめます。
野菜だけでなく魚や肉も美味しかったです。
(ちなみに、店内で育てている野菜を自分たちで収穫して、それをタジンで料理して食べるという品もあったのですが、今回は時間の関係でやりませんでした。)
↓店内中央には物販エリアがあり、ここでも生で食べられるとうもろこしや白い色のナスなど、興味をひく野菜がたくさん置いてあります。
店員さんもきちんと野菜についての知識を持っていて、色々と説明してくれます。
↓店の外には、こんな風に選挙ポスターを模した農家の方々のポスターが!
決してまじめだけではありません。
遊び心を忘れず、人の関心を惹くこと、興味を喚起することの重要さを理解していますね。今の農業に足りないものは、そこだと思います。
自分は、このお店を「意志のこもったパフォーマンスでお客さんに自分達のビジョンを伝えるお店」だと理解しました。
例えば、野菜ジュースからお酒、デザートに至るまで、ほとんど全ての品が農業生産物を元につくられていますが、「まずお通しが井戸サラダ」という順番には、「野菜をまず生でそのまま食べてもらってから、次の手間をかける料理に進んでほしい」というメッセージを感じることができます。
また、物販エリアでも、ユニークな名前と姿を持った野菜の良さを、ポップなどできっちりお客さんに伝えています。
国立ファームという農園自体でつくられた作物の割合は決して高くないのですが、仕入れ先の農家に関しても、お店のスタッフが「農家の方々ときちんと話をしていること」、「作物に対しての理解をきちんとしていること」を感じます。
そして、最も重要なことは、その上で「それをお客さん=消費者に伝える工夫をしていること」です。
全てのビジネスにおいても同じことですが、消費者は、自分がその「価値」を理解できない商品に対して、金銭的な対価を払おうとはしません。
消費者一人一人がその商品の価値を理解した上で、それに見合う対価を払おうと思う人が多ければ多いほど、またその金額が高ければ高いほど、当然その商品の社会的な価値も高まります。
日本の農作物は、安全性の面でも、美味しさの面でも、きっと海外の作物に負けないクオリティを持っているはずです。また、作り手の農家の方々も、思い入れを持って様々な工夫をされていることでしょう。
しかし、そのような価値も、消費者に伝わっていなければ、金銭的/社会的な価値にはなりません。
「現在の農家は、どうつくるかと同じくらい、どう売るかを考えなければならない」という以前にも紹介した言葉の一つの形を、まさしく実践しているのがこのお店でしょう。
ここには、驚きと感動があります。
自分が支払った金銭的な価値よりも、より高い価値を提供していると思います。
(実際に料理はどれも非常に美味しかったです。「企画モノのレストランだから」とタカをくくっている人は、驚くでしょう。)
消費者に、価値のあるものを提供し、その対価を受け取るという商売の大原則。
それが、高橋がなりさんの言う「まっとうな商売」という言葉にもつながると思います。
そのためには、特に農業の場合は、「価値をどう伝えるか?」ということをもっともっと考えないといけないように思います。
思えば、「良いものをつくれば売れる」という意識がだいぶ薄れてきている現状で、その価値を伝える努力をあまりしてこなかった農業というのは、非常に珍しい業界だったと言えるでしょう。
産直や農場が直接経営するレストランなどが増える中で、そのような風潮も少しずつ変わっていくのかも知れません。