2009年3月13日

余った農産物は本当に廃棄処分しかないのか?

ジュニアです。

今年はりんごが大量廃棄の憂き目にあうようです。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090313k0000m040119000c.html

誰でも感じることだと思うのですが、これって、本当に廃棄以外に方法がないのでしょうか?

そもそも処理キャパシティを越えるほど加工用に回される量が増えるのは、生食りんごの通常の市場取引価格を維持するためだとニュースに書いてあります。

しかし、農家の収入を最優先事項と考えた場合、農家にとって重要なのは、直接消費の場での実勢価格ではなく、取引市場での価格に過ぎません。(ほとんどの農家にとっては市場が直接の顧客なので)。

であれば、市場に出しても値がつかないものについては、直接、消費者に売ってしまえば、取引市場に流入する商品の総量=価格決定要因に影響を与えないので、廃棄よりはずいぶんマシだと思うのですが,,,。(今回の件も、総量を事前に設定して残りを廃棄という判断なので、なんらかの対策を行う場合も、値崩れを防ぐための総量規制は行ったうえで、廃棄分を特例として考えるという順番が必要です。)

ニュースではさも悲観的なことのように書いてありますが、結局は
・加工が間に合わない=限られた場所で一括で加工するから
・金額が折り合わない=限られた場所で一括で取引するから
という、これまでのやり方を変えないことによる構造的な問題に過ぎません。

某掲示板でも、

 「青森の農協は無能か?何のためにある組織なのか? ネットで調べてもりんごの安売りの情報がない。または見つけれない。 本当に深刻なのか疑ってしまう。 」
 「値崩れしないように出荷制限してるのにネットでなんか売れるわけないだろうが。農協に入ってなければできるかもしれないけど。」 
  「キレイな食用りんごまで値崩れして良いと思う。 農産物は価格差が有って当然の商品と言える。 危機の時、従来品の高値維持をしながら、不良品もどうにかしたいという考え方が間違ってる。」

というように、まっとうで的を射た意見が多く書かれてます。

いずれにしても、消費者の感覚、そして倫理的な感覚から明らかにおかしいこの対策は、「売る側の努力」の欠如にあることは間違いないでしょうし、そういったことを今の消費者は感覚として許さないでしょう。

たとえば農家を救うために、スーパーで自分がりんごを1個買うことが、何らかの貢献をしていると思える人は少ないはずです。それは、市場という巨大流通システムが間に入ることにより、消費者にとってのスーパーで並んでいるりんごの情緒価値を限りなく小さく見せるからです。

日本全体でりんごが100,000個あって、その1個を買うだけでは、状況に変化を起こせる気がとてもしません。
でも、ある農家のりんごが100個しかなかったら、その1個を買うことにはリアリティがあります。

市場流通だけを見ている限り、「かわいそうな農家さんだなとみんな思うんだけど、特に何もできない」という状態が毎回繰り返されるだけなのです。

ニュースのデータの基準がよくわからないことと、とりあえず青森以外でも通用することを考えるために、全国統計でちょっと考えてみました。

少し古いデータですが、日本のりんご総生産量(80万t)を日本のりんご農家の数(50,000戸)で割ると、1農家あたりの生産量は15,000-20,000kgくらいでした。

15,000kgだとして、りんご1個の重さの平均を300gとしたら、1農家あたりの生産量は50,000個。
りんご農家1戸あたりの生産量50,000個×日本のりんご農家総数50,000戸×日本の中の青森のりんご農家割合33.3%=8.25億個です。

廃棄率が10%なら、青森の廃棄量は8,250万個です。

「送料を払ってもスーパーより割安なら買う」「最初から加工目的」という消費者が1世帯あたり10個買うなら、825万世帯が買えばなんとかなります。

たとえばamazonのマーケットプレイスとプロマーチャント取引を行うと、例えりんご自体を売った収入が0円でも、郵便局定形外(3辺30cm四方の箱に入れることができれば)の正規送料(390円)とamazon側が設定する送料・手数料(500円)の差額で1取引あたり110円の儲けが出品者に入るので、825万世帯に全部売ることができれば、9億円を越える利益がそれだけで入ります。
農家一人当たりの利益は50,000円強。10個100円でりんごに値をつけて売ったら、さらにその倍額近い金額です。
※注意①
消費者にしてみれば、既に送料が500円かかっているので、実際にはりんご自体の値段が0円であっても、1個50円の計算になります。ここがネックです。
※注意②
30cm四方の箱に本当にりんごが10個入るか?やや疑問です。
そのことを考えると、やはり何らかの加工をしてから送った方が確実かも知れません。でも、小ぶりなものほど生食で売れないから残っている、という要素を加えると、ここは気にしなくてもいいかも知れません。

あるいは、奥の手として、全在庫をamazonの倉庫に一度搬入して、書籍やCD,DVDとセット売りにしてしまうという手もあるかも知れません。
とりあえず、既にamazonでりんごが業者によって「5kg・1900円・送料無料」で売られていました。
独立・産直系のこだわりのりんご通販なら、3kgで2,000-3,000円くらいします。
それなら、「廃棄から救え!農家が直出し!3kg・500円・送料無料」でも十分に競合できると思います。

日本の総世帯数5,000万世帯のうち、825万世帯がりんごを格安で手に入れると実勢価格に影響を与える可能性は否定できませんが、「廃棄されなかったりんご」が、ちゃんとしたクオリティの生食のりんごと本当に競合するでしょうか?また、加工食品にするものは、数ヶ月後の使用を前提として加工→パッケージング→流通→小売と進むので、「収穫後すぐの加工前提のりんごを消費者に届ける」というのは、タイミングとして今までにない=新たな需要のはずで、需給バランスへの影響は名目の総供給量変化より少ないはずです。

(別にamazonを使わなくても、10個あたり100円の利益が出せるように調整すれば良いだけの話で、想定世帯数を半分にして、1世帯あたりの数を 20個にして、送料+200円で売った方がシンプルかも知れません。ただし、その場合は統一的なシステムがないので、告知+システム設定費+対応人件費がコスト として発生し、物理的に不可能でしょうし、一度つくってしまうと維持コストもかかります。amazonなら、青森の役所の人が業者として登録して、発送業務を各農家に割り振るだけでできるので、時間も資金もコストミニマムで、十分実現可能な範囲だと思っています。)

重要なことは、通常ありえない「りんごの価格が0円になってしまった!」という状態ですら、儲ける方法はある、ということ。
(この方法なら3kgで100円利益が出ます。ニュースにあるみたいに本当に20kgで50円にしかならない+捨てるしかない、という状態なら、こっちの方が全然良いでしょう)
そして何より作物を無駄にしないための努力ができる、ということ。

全て机上の空論ですが、それでも、せっかく作った食べ物をわざわざ廃棄するなんてことほど馬鹿らしい話よりは、ずっとマシだと思います。

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